


私自身は10代の頃から琉球空手の道場で練習を積んでいました。その練習の中に「座禅」や中国での身体修養法である「気功」の練習も含まれていたのですが、自分自身でも様々な方法を模索していました。
その中で「呼吸法」を行なう事によって、身体中に「電気が走るような感覚」や「視界が鮮やかに写る」などの身体感覚の変化が起こる事に気付きました。
しかしこれはあくまで個人的な感覚であるため客観的な視点から、生理的に自分の身体にどのような変化が起きているのかを研究したいという思いがありました。
その思いが高じて大学では駒沢大学仏教学部禅学科で座禅の勉強を、卒業後には東京成徳大学院での臨床心理学の研修と平行して、呼吸法を専門的に研究しました。
私が東京成徳大学院時代に研究した呼吸法の実験では、成人の被験者に呼吸法のレクチャーして、2週間から3週間の訓練を行ないました。手のひらの血流を呼吸法で変化させる実験でした。
被験者の中には呼吸法を始めて数分で手のひらの手掌温度を数度変化させた被験者もいました。
今後の呼吸法の実験の課題は、もっと気功の訓練を長く続けた被験者の脳内での変化と身体の生理的変化、主観的な感覚の変容の対比をした実験が必要だと考えています。今後も学術研究機関と連携してより生理的な変化を捉えられる研究を行っていく予定です。
またこの研究の中で催眠と呼吸法の関係についても興味深い示唆が得られました。深い催眠状態に入りやすい被験者にはある特徴的な身体感覚が共通して起こっている事をシュルツ博士が報告しています。それは自分の腕や脚が極限までリラックスすることにより感じる「重感」や、そのことにより血流量が増す事による「温感」です。
シュルツ博士はこれらの特徴を最初から被験者が自分で自分に暗示をかけることにより作る為の方法として「自律訓練法」を作りました。
気功の呼吸法を行なう事でこの「重感」や「温感」をより早く作り出す事が可能だと考えています。
呼吸法が身体生理に及ぼす影響は非常に大きく、これをコントロールすることはメンタルヘルスにも大変有効であるといえます。
現在の所、HP上にて呼吸法のやり方に関する情報を掲載していく予定です。
調身・調息・調心というのは気功やヨガの練習のコツのひとつです。それは身体の動きと呼吸法とイメージという3つの要素を一つにシンクロさせることをいいます。これをヨガではビンヤサ(フロー、流れ)といったりします。
基本原則は、
①息を吸う時は、身体の背骨を反らすように伸ばす
②息を吐く時は背骨は真っすぐなままで肩の力を抜いて、横隔膜を落としてお腹に重心を置く
この2点です
この調身・調息・調心の原則に沿った呼吸法が「逆腹式呼吸法」あるいは「胸腹式呼吸法」と呼ばれている呼吸法です
①息を吸うときに胸部を開きお腹を凹ませて息を吸い込みます。
②呼吸停止3秒間。このとき胸部が凹んでお腹が膨らまないように胸の開いた状態をキープします。この止息をヨガでは「クンバカ」といい、非常に大切なコツの一つです
③息を吐いて背骨は真っすぐを保ったまま、肩の力を抜いて脱力して、横隔膜を落としてお腹を膨らませ、重心をおへその下あたり「丹田」と呼ばれる所にどっしりと落とします。
この呼吸法の動きにイメージを使って意識を身体の隅々にまで通す練習をしていると、実際に身体の中を熱が走るような感覚が起こるようになります。息を吐いた時には視界がクリアになって、身体に電気が走るような感覚が起こることもあります。気分は爽やかで目に映るものが鮮やかに見えます。
呼吸法の練習は15分程度で終わるようにして、決して長時間は行なわないようにしてください。